焼香の正しいやり方・マナー・宗派ごとの違いについてご紹介
1. 焼香とは?
葬儀に参列する中で一番の悩みごとといえば焼香ではないでしょうか。
正しいかどうかわからないまま先に焼香された方の真似をして、何となく済ませていませんか。
焼香の意味と正しいやり方を覚え、いざという時に備えましょう。
焼香とは仏教式の葬儀においてお香を焚いて故人、仏様を拝むことです。
葬儀式では心身の穢れを清浄する意味もあるようです。
一方で仏教発祥の地インドでは、臭い消しという実用的な面や極楽浄土に漂う香りが広く平等に行きわたる様を表しているともいわれております。
焼香には樒(しきみ)の葉や皮を乾燥させ粉末にした抹香焼香と、細い棒状にしたお香を使用する線香焼香の2種類があり、通夜、葬儀・告別式では抹香焼香が主流となっています。
2. 焼香のやり方・作法
2-1. 立礼焼香
立礼焼香は歩いて祭壇の前まで進み立ったまま焼香する、最も一般的なスタイルです。
主に葬儀場やホール会場など広めの会場で、参列者が座る椅子を用意できる場合に行われることが多いようです。
立礼焼香の流れですが、係の案内に従い順番が回ってきたら遺影の前まで進み出ます。
僧侶・ご遺族へ一礼し、祭壇へ向き直り遺影へ向かって一礼します。
焼香するときは左手に数珠をかけておきます。
右手の親指・人差し指・中指で抹香をつまみ香炉へ移します。
(抹香を香炉へ落とす回数は宗派により異なりますので、確認しておきましょう)
数珠を片手または両手の親指以外の指を通し親指で押さえ合掌します。
焼香台から後ろ向きのまま2〜3歩下がって僧侶・ご遺族へ向き直り一礼し、自分の席へ戻ります。
2-2. 座礼焼香
座礼焼香は正座したまま行う焼香方法の一つです。
お寺や小規模会場の和室で正座をして葬儀を執り行う場合に用いられます。
焼香の仕方は立礼焼香と同じですが、祭壇前への移動方法が普段しない動きなので少々動きにくいかもしれません。
順番が来たら祭壇前へ移動します。
この時、膝は床につけたままつま先立ち状態で膝行(しっこう)・膝退(しったい)と呼ばれる方法で、立ち上がらずに移動するのがマナーです。
しかし祭壇前まで遠い場合は中腰で移動しても問題ありません。
この後は立礼焼香と同じ手順を座ったまま行います。
まず僧侶・ご遺族に一礼し、祭壇へ向き直り遺影へ向かって一礼します。
焼香するときは左手に数珠をかけておき、右手の親指・人差し指・中指で抹香をつまみ焼香します。
数珠を片手または両手の親指以外の指を通し、親指で押さえ合掌します。
焼香台から後ろ向きのまま膝行で2〜3歩下がり、僧侶・ご遺族へ向き直り一礼し、膝行もしくは中腰で自分の席へ戻ります。
2-3. 回し焼香
回し焼香とは祭壇前に設置された焼香台には行かず、参列者の間を回ってきた香炉と抹香のセットを用いて自席で焼香をする方法です。
トレーまたはワゴンに乗せられて回ってくることもあります。
自宅で葬儀を行う場合や葬儀会場の規模より参列者が多かった時、また高齢者が多い葬儀の際にも選択されることがあります。
焼香の仕方は基本的に立礼焼香と同じやり方を座ったまま自席で行います。
焼香を終えた隣の人から、軽く会釈をして香炉と抹香の乗ったトレーを受け取ります。
焼香を行い、遺影に向かって合掌します。
終わったら次の人へ両手で回します。
3. 宗派による違い
3-1. 焼香の回数
焼香の回数、押しいただくかどうかは宗派により様々です。
慣れるまで戸惑うかもしれませんが覚えておくといざという時に安心です。
・真言宗:抹香を押しいただきながら3回香炉にくべます。
・日蓮宗(日蓮正宗):押しいただくかどうかは任意とし、抹香を3回香炉にくべます。
・臨済宗:抹香を押しいただきながら1回、香炉にくべます。
・浄土宗:1〜3回行いますが、特に決まりはありません。
・浄土真宗本願寺派:抹香は押しいただかず1回、香炉にくべます。
・浄土真宗大谷派:抹香は押しいただかず2回、香炉にくべます
・曹洞宗:抹香を押しいただきながら1回、2回目は押しいただかず香炉にくべます。
・天台宗:抹香を押しいただきながら1〜3回香炉にくべます。
宗派別に説明しましたが、地域や寺院によっても異なります。
また参列者が多い時などは焼香回数を1回と指定される場合もありますので、その際は指示に従いましょう。
※押しいただく=お香を額の高さまで上げる行為を指します。
3-2. 数珠のかけ方
日本の仏教には多くの宗派があります。
なかでも真言宗、日蓮宗(日蓮正宗)、臨済宗、浄土宗、浄土真宗大谷派、浄土真宗本願寺派、曹洞宗、天台宗は日本八宗と呼ばれる代表的な宗派です。
日本八宗に準じた代表的な数珠のかけ方を説明します。
・真言宗:房が手の甲に垂れるように両手の中指にかけ、数珠を包むように手を合わせ合掌します。
・日蓮宗(日蓮正宗):房が3つある方を左手の中指にかけ一度ひねり、2本の房がある方を右手の中指にかけます。房は手の甲に垂らし両手を合わせ合掌します。
・臨済宗:数珠を二重にし、左手の親指以外の指に掛けます。親指で軽く数珠を抑え、房は垂らした状態で両手を合わせて合掌します。
・浄土宗:二つの輪を一つに合わせ両手の親指に数珠をかけます。数珠は体の前に来るようにし、房は垂らした状態で合掌します。
・浄土真宗本願寺派(西):数珠を二重にして両手の親指と人差し指の間にかけ、房は小指側に来るように垂らして合掌します。
・浄土真宗大谷派(東):二重にした数珠を親指以外の指に掛けます。この時親玉が上に来るようにし房は左側に垂らします。
・曹洞宗:輪をひねって二重にした数珠を左手の親指と人差し指の間にかけ房は垂らしておきます。右手を左手に添えるように合わせ合掌します。
・天台宗:人差し指と中指の間に数珠をかけ、房は下側に垂れるようにします。そのまま両手を合わせて合掌します。
4. 焼香のマナー
4-1. 喪主・遺族への挨拶
お悔やみの言葉としてよく使われる「お悔やみ申し上げます」は口語でも、弔電の文面どちらでも使用できます。
しかし「御愁傷様です」という表現は口語では使用しますが文面では使用しません。
また「ご冥福をお祈りします」は故人に対して使用する表現なので、ご遺族には使わないように気をつけましょう。
故人との親交が深かった場合、募る思いを長々と伝えたい、色々と尋ねたいという気持ちもあるかもしれませんが、ご遺族の負担にならないよう手短に済ませることも気遣いの一つです。
4-2. 服装や身だしなみ
最近ではお通夜にはご近所や会社関係などの親交のあった方々、葬儀・告別式はご遺族、ご親族が参列されることが多いようです。
どちらもブラックフォーマルでの参列が多いようですが、会社帰りにお通夜へ参列する場合、ブラックフォーマルが用意できないこともあるかと思います。
その時は黒やグレー、濃紺などの地味な色合いであれば平服でも問題ありません。
靴やストッキング、靴下、バッグなどの小物もできるだけ黒で揃えるようにしましょう。
5. まとめ
葬儀では宗教・宗派により作法が異なるので迷うことが多いでしょう。
また何気ない会話の中にも控えたほうがよい言葉遣いなどがあります。
いざという時、失礼の無い対応ができるようにしておきましょう。