1. 合掌とは?
ご葬儀に参列した際や法事・法要の際に数珠(念珠)を手に持って合掌を行います。
合掌とは、左右両方の手のひらを胸の前で合わせ拝むときの所作、仏を拝む時の礼法と言われています。
右左両方を合わせることにより仏の世界と現世が一体となり、成仏を願う気持ちを表しています。
アジア諸国では、「あなたのことを大切に思っている」というような敬意を伝えるために合掌をすることがあり、葬儀から日常まで使われています。
2. 合掌の由来
合掌という所作は、仏教が生まれたインドが発祥です。
その後、日本には仏教を通じて伝わってきました。
合掌はサンスクリット語の「アンジャリ(anjali)」の訳で、インドの敬礼作法の一種が仏教に取り入れられたものと言われます。
インドでは右手が清浄を、左手が不浄を表します。
また、仏教では右手が仏様の世界(極楽浄土)を、左手が現世(衆生:しゅじょう)を表しており、両手を合わせることで仏様の世界と現世が一体となり、成仏を願う気持ちを表しているものと言われています。
掌を合わせることは、左右相対したものがひとつに合わさり、相手を信頼することや調和を保つことの象徴でもあります。
日本の日常生活にも名残があります。
3. 日常生活における合掌の意味
合掌と聞くと、葬儀の場合によく聞き、日常の中ではぴんとこない方が多いかと思います。
しかし、今でも日本では、日常生活の中において合掌という手を合わせる所作はよく使われているのです。
例えば、食事の前に「いただきます」と言って目の前の食事に対して手を合わせますが、これは食べ物となった生命に対してお祈り、すなわち「感謝」や「敬意」を伝え、ありがたくいただきます、という気持ちを込めて合掌しています。
食事の際に合掌するのは、食事を作った人、食材を育てた人、食事となった植物や動物への全てに感謝を表すものでもあります。
インドや南アジアでは挨拶の所作として、すれ違う際や別れる際などに合掌をして軽く会釈をすることで、相手への敬意を表すという意味を持ちます。
また、食事の他にもお詫びをする時の「ごめんなさい」、お願い事をする時の「お願いね」など、合掌して許してもらい、要求を通そうとするときに使う風潮も残っています。
4. 葬儀における合掌の意味
葬儀での合掌は、仏教の儀式であることから宗教的な意味を持ちます。
前にも述べたように、右手は仏様、左手は生きている世界の俗世を表します。
両方の手のひらをあわせることで仏様と一体になり自分の身を清め、故人の極楽浄土への道を願うことができると言われています。
仏の世界を表す右手と、現世を表す左手。
合わせることによって成仏を願う。
このような意味を知ったうえで葬儀の場で合掌すると、故人に対しての向き合い方が明白になり、心構えや気持ちの整理ができます。
故人に対し生前の感謝を示し、お別れのあいさつができる行為が葬儀での合掌です。
また、合掌には別の意味で、腹立ちを意味する「瞋恚(しんに)」や「貪欲(とんよく)」、「愚痴」など、仏様の前で洗い清めることを表します。
日本での合掌は、お通夜やお葬式のほか日常にも使われていますが、葬儀においては、仏様に対して成仏できるように故人のことをよろしくお願いしますという意味が込められていたのですね。
5. 合掌の正しい作法
ご葬儀における合掌には正しい作法があります。
礼拝の流れと共に合掌の正しい作法をまとめましたので、ご参照ください。
1. 指と指をぴったりと合わせて、両手をみぞおちの前あたりでぴったりと合わせます。
その時は、肩や腕の力は抜き、手の角度は45度程度に傾けて、自然な体勢をとります。
胸にくっつけるのではなく、少し隙間を開けておきましょう。
2. 親指と人差し指の間に数珠(念珠)を手にかけて軽く押さましょう。
3.宗派に沿った念仏を唱えて、上体を前に45度程度傾けて一礼をします。
頭は前方に傾けて、目を軽く閉じましょう。
4. 上体を起こして合掌をときましょう。
改めて正しい作法をやろうとすると、戸惑いからぎこちなくなることもあるかもしれません。
ただ、所作について不安になることはございません。
ご葬儀の際に周囲の方の所作を確認すると良いでしょう。
大切なのは、故人様の成仏を心を込めて願えば細かい動作を気にする必要はなくなるかと思います。
6. まとめ
合掌の持つ意味、由来、葬儀の際の意味合い、所作についてお伝えしてまいりました。
合掌と聞くと、聞き慣れない言葉に感じられますが、日常でも使われている所作であったりします。
故人が成仏できるよう心からお祈りする気持ちが合掌では大切なこととなります。